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東京地方裁判所 昭和54年(行ウ)139号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

一原告は、昭和五五年一一月一八日付け準備書面で、請求の趣旨を「被告が本件告示をもつて本件土地についてした道路指定処分が無効であることを確認する。」としているが、その主張するところは、本件告示によつて本件土地につき法四二条二項の道路指定処分がなされたところ同処分は無効である、というのではなく、被告が本件告示をもつて法四二条二項の規定に基づく道路指定処分をしたところ本件土地は本件告示所定の要件にそもそも該当しない、というのであるから、結局、事実摘示第一の一1のとおり、本件土地について被告の法四二条二項の規定に基づく道路指定処分が存在しないことの確認を求めているものと解される。そこで、以下その当否について判断する。

二被告が本件告示をもつて法四二条二項の規定に基づく道路指定処分をしたこと、本件告示三号本文が「基準時において、現に存在する幅員四メートル未満1.8メートル以上の道で、一般の交通に使用されており、その中心線が明確であり、基準時に、その道のみに接する建築敷地があるもの」を法四二条二項の道路として指定(基準指定・包括指定)していること、被告が本件土地も右三号本文に該当する土地の一部をなすから右道路指定処分の対象となつていると主張していることは、当事者間に争いがない。

また、<証拠>によると、原告は別紙目録一の土地(原告所有地)を所有していることが認められ、この認定に反する証拠はない。

三そこで、原告所有地の一部である本件土地が本件告示三号本文に該当する土地の一部をなしているか否かを検討する。

1 住宅営団が、昭和二一年ころ、東京都江東区猿江二丁目七番の土地に多数の賃貸住宅(原建物)を建築し、被災者に賃貸したこと、同所七番一七の原告所有地の南側は一五メートル公道になつているところ、住宅営団は、一五メートル公道の北側に東西一列に並んだ五棟の原建物を建て、更にその北側に同じく東西一列に並んだ五棟の原建物を建てるというように、東西一列に並んだ五棟を一ブロックとして、順次北へ何ブロックにも分け原建物を建築したこと、原建物は、木造平家建6.25坪という同一規格の建物で出入口はいずれも北側に設けられていたことは、当事者間に争いがない。

2 <証拠>によると、次の事実が認められ<る。>

(一) 右の一五メートル公道から一番目のブロックの土地である本件南側土地は、別紙図面三表示のとおり、七番の二及び一四ないし一七の土地からなり、七番一七が原告所有地である。また、二番目のブロックの土地である本件北側土地は、同じく七番四、一〇、一二及び一八ないし二二の土地からなり、両土地の東側には七番二三の土地があり、西側には南北に通ずる幅員八メートルの公道がある。そして、本件南側土地上の原建物と一五メートル公道との間には幅約1.5間の空地が設けられ、同建物の敷地とされた。また、本件南側土地上の原建物と本件北側土地上の原建物との間には、幅五間(原建物は東西三間、南北二間の本件に0.25坪の便所が付置されたものであるが、便所を除いて計算する。)の空地が設けられた。右五間の空地のうち、本件南側土地上の原建物から北へ一間は同建物の敷地とされ、本件北側土地上の原建物から南へ二間は同建物の敷地とされ、中間の二間の部分は通路(本件道)として確保され、その中心線が両土地の境界線とされた。本件北側土地上の原建物と更にその北側に建てられた原建物との間にも幅五間の空地が設けられ、右と同様、中間の二間が通路(以下「北側道」という。)とされた。

(二) 原告は、昭和二一年八月ころ原告所有地上の原建物に入居し、原告以外の本件南側土地及び本件北側土地上の原建物の賃借人らもこれと相前後して入居した。そして、昭和二三年ころ、右賃借人らは原建物をそれぞれ買い受けて所有権を取得し、各敷地を所有者の東京都や泉養寺から賃借した。昭和二五年一一月二三日の基準時、本件南側土地及び本件北側土地並びにその東側の七番二三の土地上には、別紙図面三表示のAないしMの建物が存し、その形状は同図面表示の赤線のとおりであつた。このうち、C、J、Mは基準時においても原建物のままであり、他は基準時までに増改築されたものである。原建物の出入口も、別紙図面三表示のとおり右増改築の際に移されたものである。このうち、原告は、昭和二三年ころ別紙図面三表示のとおり原建物を増改築し、従前の北側出入口のほかに南側出入口を新たに設けた。また、別紙図面三表示Eの建物には、当初曽根田某が入居していたが、同人は昭和二四年秋の台風直後に同図面表示のとおり増改築を行い、従前の北側出入口を閉鎖して南側に出入口を設けた。

(三) 基準時において、本件南側土地及び本件北側土地の居住者らはその敷地を適宜耕して野菜等を栽培していたが、幅二間の本件道は通路として確保されていた。また、別紙図面三表示I(原告の建物)とHの建物の間は約1.2メートル、EとFの建物の間は約五メートル、更にF、G、Hの各建物の間も約二メートルそれぞれ空いており、F、G、HとE、Iの間には塀等の工作物がなく、適宜双方から往来できる状態であつた。このため、基準時当時、本件道は、右居住者、訪問者、郵便集配人、新聞配達人らをはじめ、F、G、Hの建物関係者や更には広く一般の人達が自由に通行していた。

(四) 被告の本件告示による道路指定処分がなされる以前においては、当時特定行政庁であつた東京都知事が昭和二五年一一月二八日東京都告示第九五七号及び昭和三〇年七月三〇日東京都告示第六九九号をもつて法四二条二項の規定に基づく道路指定(基準指定)を行つていたが、原告は、昭和四四年四月に一級建築士を代理人とし、本件土地が法四二条二項の道路であるとして建築確認申請を行つた。

(以上のうち、本件南側土地上の原建物と本件北側土地上の原建物の間には幅五間の空地が設けられたこと、原告が原告所有地上の原建物に入居したこと、右原建物の中には、基準時までに増築されたものがあること、基準時において、両土地及びその東側の七番二三の土地には別紙図面表示のAないしMの建物が存在していたこと、このうちC、J、Mの基準時における形状は同図面表示赤線のとおりであり、原建物のままであつたこと、基準時に原告居住のIの建物の出入口が北側にもあつたこと、A、B、C、Dの建物の出入口が北側にあつたこと、IとHの建物の間は約1.2メートル空いており、EとFの建物の間も約五メートル空いていたことは、当事者間に争いがない。)

3 以上1及び2の事実によれば、基準時において、本件南側土地上の建物と本件北側土地上の建物との間には、幅二間(約3.6メートル)の本件道が存し、本件道は東西にほぼ真直ぐで中心線が明確であり、かつ、その中心線は両土地の境界線をなし、本件土地は右中心線とその南側の水平距離二メートルの線に囲まれた土地の一部をなしているということができる。

4 したがつて、基準時に本件道のみに接する建物敷地が存すれば、本件道は本件告示三号本文に該当するところ、本件道に接する本件南側土地上の建物の敷地は一五メートル公道にも接し、本件北側土地上の建物の敷地は北側道にも接している。このうち北側道は、前記認定から明らかなように、本件道と同性格のもので、基準時において現に存在する幅員約3.6メートルの道で一般の交通に使用されていたものであることがうかがえる。すなわち、本件道が本件告示三号本文に該当すれば、北側道も同じく該当し、本件北側土地上の建物の敷地は、二本の法四二条二項の道路に接することになり、右敷地は本件道のみに接する建築敷地といえないのではないかとの疑いがある。そこで、検討するに、法四二条二項は、法三章の四三条が建築物の敷地について接道義務を課するとともに、法四二条一項が法三章において道路とは一定の要件に該当する幅員四メートル以上のものをいうと規定した関係上、同章の規定が適用される前は適法であつた既存建築物で法四三条の規定に適合しなくなるものについて、法三条三項三号所定の増改築等や取壊し新築の工事を行えない事態に至ることを救済するため、同章の規定が適用されるに至つた際現に建築物が立ち並んでいる幅員約四メートル未満の道で特定行政庁の指定したものは法四二条一項の規定にかかわらず同項の道路とみなすこととしたものである。したがつて、法四二条二項の規定に基づく本件告示三号本文の「その道のみに接する建築敷地」とは、本件告示による道路指定をまたなければ右接道義務を満たすことができない建築敷地を指していることが明らかである。北側道は右接道義務を満たすべき既存の道路ではないから、本件北側土地上の建物の敷地は本件告示による道路指定をまたなければ接道義務を満たすことができない建築敷地である。そうだとすれば、これに接する本件道は、本件告示三号本文の「その道のみに接する建築敷地があるもの」との要件を満たすものというべきである。本件告示による道路指定の結果、たまたま本件北側土地上の建物の敷地は本件道と北側道との二本の法四二条二項の道路に接することになるが、このことから逆にいずれの道も本件告示三号本文に該当しないと解することは、右敷地を右救済措置の対象外とする結果となり、法四二条二項及び本件告示の趣旨に反する不合理な解釈といわなければならない。また、右のような二本の道について同時に道路指定をなすことになつても法四二条二項の規定に違反するものではない。

5 以上の次第で、本件道は本件告示三号本文に該当し、その中心線とその南側の水平距離二メートルの線に囲まれた土地の一部をなす本件土地は、被告の本件告示による道路指定処分により道路とみなされるから、本件土地について被告の法四二条二項の規定に基づく道路指定処分が存在しないことの確認を求める原告の請求は失当である。

(泉徳治 大藤敏 菅野博之)

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